雑記206. 2016. 2.14
“ 久米島ドングリ探検ツアー ”
2月4日〜6日の3日間、久米島(*)[ 所在地 : 沖縄県島尻郡 ] にドングリ採集に行ってきました。言うまでもなく、ターゲットはオキナワウラジロガシのドングリです。
今回のドングリ探検ツアーは、拙著 『 どんぐりの呼び名事典 (世界文化社刊)』 の出版に際して協力してくださった久米島在住のKさんから、一昨年の秋にドングリ拾いのお誘いを受けた事に始まります。メールを頂いた年は、その前年に続き、島内全域でほとんど結実しなかったので、残念ながらツアーは延期となりました。その後、Kさんからは連絡がなかったので、昨年も同様に不作なのだろうと思っていたところ、年末ギリギリに “ 量は少ないけれどドングリが結実している ” との連絡がありました。急な話だったのですぐに出かけることが出来ず、約1ヶ月遅れの2月になってようやくツアーを決行することになりました。
なお、今回のツアーには、拙著の出版以来懇意にして頂いている世界文化社の飯田猛さんが同行されました。Kさんとの調整も飯田さん無くしてはありえず、いつもの事ながら感謝の念に堪えません。この場をかりて、あたらめて御礼申し上げます。
* 久米島は総面積がおよそ60km2で、沖縄県では5番目に大きな島です。
オキナワウラジロガシは日本の固有種で、沖縄本島以外では奄美大島、徳之島、石垣島、西表島、久米島の5島に自生しています。久米島では宇江城岳を中心とする北部山岳地帯、フサキナ山を中心とする中部山岳地帯、そしてアーラ岳を中心とする南部山岳地帯と島内のほぼ全域に分布しています。
現地を案内して下さったKさんによると、島内にはドングリを捕食する動物がいないことや、沖縄本島のように奥深いジャングル(ヤンバルの森)に植生していないので、他島に比べてオキナワウラジロガシのドングリが採集しやすいのではないかとの事です(**)。
** Kさんのように現地の山をよく知っておられる方の所感であって、ほとんどの場合、現地の方の手助け無しにオキナワウラジロガシのドングリを採集するのは困難です。
初日は北部の宇江城岳付近と南部の島尻の森を散策しました。どちらも鬱蒼とした森の中に、たくさんのオキナワウラジロガシが林立していました。
Kさんによると、オキナワウラジロガシは沢や川沿いに広く分布しているとの事。一見、水の流れていない林道にも流木が散乱していることから、多雨期にはここが一時的に水の流れる通路になるみたいで、水流がドングリの散布に大きく関与していることはほぼ間違い無いと思われます。
さらに、オキナワウラジロガシは川や澤沿いを中心にそこから垂直方向にも植生域を拡大しており、一箇所に数百体以上の群落を形成していました。
さて、オキナワウラジロガシのドングリですが、どちらのポイントにもたくさん落ちていました。堅果の長さが40mm、幅が30mmを超える巨大なドングリが至る所にありましたが、それらのほとんどは既に発根しており、発根していないものはごく僅かでした。暖かくて雨の多い気候が影響しているせいか、オキナワウラジロガシのドングリはどの個体でも発根率が非常に高い印象を受けました。
Kさんからは事前に、久米島のオキナワウラジロガシのドングリは11〜12月が落下の最盛期だとお聞きしていたので、このような状況は想定内だったのですが、状態のいいドングリを好んで収集している我々にとっては、やはり残念でなりませんでした。
当日、複数の個体から採集した比較的きれいなドングリをまとめたのが図8-206-6です。久米島のオキナワウラジロガシのドングリには様々な形態が見られましたが、大きく分けると、首の辺りを除いて無毛のもの [ 図中(a)] と、へそ以外は微毛に覆われたもの [ 図中(b)] の2つのタイプがあることが判りました。
図中の(a)以外は、全て(b)のように完全に微毛で覆われたものや部分的に微毛が剥離したものです。この点は、オキナワウラジロガシのドングリの特徴を表す重要な知見と言えるでしょう。
2日目は朝からどしゃぶりで、残念ながら予定していた探検は中止となりましたが、昼過ぎにやや小降りになったので、前日のポイント以外にオキナワウラジロガシが自生している所(主に中部や南部の山岳地帯)を車で行ける範囲でKさんに案内して頂きました。
車窓から常緑樹に覆われた山の斜面を見ると、オキナワウラジロガシの所在の目印となる黄緑色の若葉が目につき、かなり広い範囲で群落を形成しているのがよく判りました。
最終日は11時発の飛行機に乗るので、出発までの数時間をアーラ岳の麓に広がるアーラ浜で、浜辺に打ちあげられたサンゴや貝類を拾って過ごしました。これが結構嵌ってしまって、飯田さんといっしょにひたすら無言で拾い続けていました。私は丸いサンゴが気に入ってそればかり集めていたのですが、飯田さんも丸いのがお好きみたいで、同じようなものをたくさん拾われてました(図8-206-8参照)。やはり、ドングリが好きな人は丸いものに目がないのでしょうか...?
今回のツアーでは、島内にあるオキナワウラジロガシの一部の群落しか踏査できませんでしたので、またあらためてドングリが落下する最盛期に飯田さんとチャレンジするつもりです。
オキナワウラジロガシの樹やドングリの詳細については、近日中に新しいセクションを設けて報告しますので、お楽しみに。
(追記)
自宅に戻ってきて採集したドングリの袋を開封すると、発根していない貴重なドングリに小さな穴が開いていました(図8-206-9参照)。勿論、ドングリの種子を食べるシギゾウムシの仲間が開けたものです。
オキナワウラジロガシのような大きなドングリでも、中から出てくる幼虫はみんな同じサイズなんですね♪もっと大きな幼虫が出てくるのかな〜、なんて思ったりしていました。