雑記203. 2015.11.19
“ 扁平なシラカシのドングリ ”
 自宅のある兵庫県三田市とその周辺地域には、多くのシラカシが植栽されています。中でも、三田市内の深田公園と同市に隣接した神戸市北区の掖谷公園のシラカシに結実するドングリは、形態の多様性に富んでおり、ここでしかられない特異なものもあります。

 今年の秋は、両園ともシラカシが大豊作で、とりわけ掖谷公園では珍しい形態のドングリが大量に落下しました(図8-203-1参照)。

 このドングリは、堅果の幅が16〜18mmもあり、普通のシラカシに比べるとかなり大きくて太めです(図8-203-2参照)。でも、このドングリが特異なのは太いからではありません。実は、へその側から見ると、図8-203-3の様に扁平な形をしているのです。
 ウォーターオークのドングリのように、堅果を縦方向に押しつぶした形のものなら樹種を問わずよく目にしますが、真横から押しつぶしたような形のものには、なかなかお目にかかれません。

 実は、この個体に結実したドングリは、全てがこのような形をしているわけではありません。結実したドングリのおよそ10〜20%だけが、例年このような扁平な形をしているのです。10〜20%と言うと結構な数で、先日訪れた時も樹上にはまだ半分以上のドングリが残っていましたが、地面に落下したものだけで扁平なドングリが200個以上ありました。

 このドングリが扁平な形をしている理由は、1つの堅果が複数(2〜3個)の種子を包含しているからです。通常、複数個の種子を包含した堅果は、種子のボリュームに耐え切れず、しばしば果皮に亀裂が入ります。雑記185で紹介した複数の種子をもつアラカシのドングリがそのいい例です。
 それにも関わらず、このドングリは果皮を横方向へと柔軟に拡張することで、成熟しても果皮に亀裂が入らない見事な姿形を披露しています。稀にみる技巧派のドングリに、私は惜しみない拍手を送りたいと思います。