雑記020. 2010. 8. 5
“ ついに出た! 〜ドングリに潜む謎の虫〜 ”
 以前、ドングリに変形をもたらす “ 謎の虫 ” について紹介しました(セクション9参照)。この虫は、堅果の中に寄生して、堅果と共に成長する奇妙な生態を示しており、私が調べた限りでは、関連する文献でこのような事例は全く見当たりませんでした。
 そこで、どうしても私自身でこの虫の正体を明らかにしたいと思い、昨年の11月中旬に、ドングリの中から虫室だけを100個程度取り出して、プラスチックの密閉容器の中に集めて、成虫が出現するまで只管待つことにしました。

 ところが、タネを仕込んで半年以上経過した7月に入っても、容器の中には何も変化が見られませんでした。半ば諦めかけていたのですが、先月の末の30日に数日ぶりに容器を覗くと、ショウジョウバエのような小さな虫がたくさん飛び交っているのが目につきました。容器を手にとって良く見ると、虫室には小さな孔(図8-20-1参照)がたくさん開いているじゃないですか〜♪

 そうなんです!このハエの様な小さな虫が、ドングリに寄生していた謎の虫の成虫なんです!!

 成虫の外観を損傷しないようにする為、羽化したばかりの虫達には大変申し訳ないのですが、容器の隙間からエタノールを流しこんで、安らかに天国に行ってもらいました。容器内で羽化した成虫は、合計11匹でした。見た目はショウジョウバエとほとんど区別がつかないのですが、実体顕微鏡で拡大観察すると、腹部から針の様なものが突出しており、どうやらハエでは無くて小さなハチのようです(図8-20-2、図8-20-3参照)。

 成虫の姿が確認出来ましたので、いよいよこの虫の正体が明らかになるかもしれないと思い、昆虫関係を専門にされている虫ナビさん(**)にお訊ねしたところ、

“ タマバチ科の一種ということしか判りません。通常タマバチ科の仲間は虫瘤を作るので、ドングリの中にある虫室が恐らく虫瘤(*)に相当すると想像します。文献で探しましたが、該当するものは見つからず、もしかしたら新種か未記載種なのかもしれません。”

との回答を得ました。ということで、残念ながら種類については推測出来るものの、依然正体を明らかするには至っておりません。もしかすると、虫ナビさんがおっしゃるように、本当に今まで誰にも気付いてもらえなかった新種なのかもしれません。

 7月30日以降容器内を観察してきましたが、100個以上ある虫室の中で、結局羽化したのは最初の11匹だけでした。孔の開いていない虫室を20個程ペンチでこじ開けてみると、昨年末に見た幼虫が相変わらず蠢いていました(図8-20-4参照)。中には死んでいるものもいましたが、蛹は見当たりませんでした。
 この虫については今後も調査を継続し、このHP内でより詳しい生態を明らかにしていきたいと思います。

  * 虫瘤というのは、植物の内部に昆虫が産卵管を差し込んで卵を産みつけることによって、植物の組織が異常に発達して生じるコブ状の突起のことです。この中で、卵から孵化した幼虫は成虫になるまでの間を過ごします。

** 虫ナビのHPアドレス [ http://mushinavi.com/ ]