雑記198. 2015.10.23
“ 8年ぶりに実りました ”
 多果ドングリは、1つの殻斗の中に独立した複数の堅果をまとめて包含した形態が一般的です。他にも、独立した複数の堅果を殻斗が分離して包含したものや、殻斗の中で隣接した堅果同士が合着したものもありますが、多果ドングリの中でこれらは少数派です(*)
  * 多果ドングリの形態については、セクション3-1-1を参照願います。

 ところが、深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] にある多果多産のシラカシの中には、多果ドングリの大半を殻斗の中で隣接した堅果同士が合着したものが占める個体があるのです。私が初めてこの個体で多果ドングリを採集したのは、今から8年前になります。ちょうど、多果ドングリに興味をもち始めた頃で、これらのドングリが樹上を賑わす姿に興奮したのを今でもよく覚えています。
 
 ただ、その翌年のこのエリアに植栽されているシラカシは全て剪定されてしまい、それ以降この個体は全く結実しませんでした。いつになったらドングリが実るのだろうと、長い間待ち続けてきたのですが、今年になってようやく当時の姿が蘇りました。
 通常、多果の幼果はほとんどが結実しませんが、この個体では相当数の多果が順調に成長し、8年前に見た時と同じぐらいたくさん結実していました。今回採集した多果ドングリの一部を図8-198-2に示します。

 殻斗の中に包含された堅果が独立するか、あるいは合着するかは、多果を構成する雌花同士の間隔に依存していると私は考えています(**)。雌花同士が極端に近接すると、本来別々に雌花を包むはずの花被/花床が、近接した複数の雌花を一括して包むことで、合着した多果ドングリが誕生します(***)。因みに、その状態よりもさらに雌花同士の間隔が近づくと、堅果同士が完全に一体化して、見た目には単果と変わらない多果ドングリが誕生します。
  ** セクション3-1-4を参照願います。
*** 図8-198-2の中で、2個の堅果のへその部分だけが合着したものは、花被/花床が2個の雌花を別々に包んでいます。
 今回、堅果同士が合着していない多果ドングリも含めて、ユニークな形をしたものが幾つか見られました。図8-198-3の右側にあるのは、その一つです。私には、まるで未開人が儀式で被るお面のように見えるのですが、みなさんはいかがでしょうか?後日、今回採集したユニークなものをまとめて、セクション18のどんぐり美術館に展示しますのでぜひご覧下さい。