雑記195. 2015.10. 5
“ ブナの単果は一味違います ”
少し前に、妙見山 [ 所在地 : 大阪府豊能郡能勢町 ] のブナ林を訪問(*)してから2週間が経ちました。そろそろブナのドングリが熟し始める頃なので、再び現地に行ってきました。
* 雑記194を参照願います。
樹下にはたくさんのドングリが落ちていましたが、大半はまだ樹上にありました。2005年の秋の大豊作の時とは比べものにならない数量でしたが、今年は山頂付近の3〜4体でそこそこ落下するのではないでしょうか。因みに、図8-195-2は現時点でドングリの落下量が最も多い個体の樹下を撮影したものです。他の個体はもっと少なくて、1平方メートル当たりせいぜい10〜20個ぐらいでした。
採集した堅果をよく見ると、稜の部分にエラのようなデッパリがあるもの(図8-195-3 右側)と、そうでないものがあるのに気づきました。両者の比率は、前者の方が圧倒的に多数を占めていました。
さて、前回ここを訪れたに、1つの殻斗の中に3個の堅果が入ったブナの多果ドングリを見つけたので、今回はさらに注意深くドングリをチェックして回りましたが、残念ながら多果ドングリにはお目にかかれませんでした。でも、1つの殻斗の中に1個だけ堅果が入った単果なら全部で4個も見つかりました。勿論、単果に遭遇したのは今回が初めてです。てっきり、殻斗の中に必ず堅果が2個入っているものだとばかり思っていたので、これには驚きました。
図8-195-5は、今回採集したブナの単果の例です。1つの殻斗の中に2個の堅果が入った典型的なブナのドングリは、必ず堅果の稜と接する箇所で殻斗が分裂します。2個の堅果が入った普通のドングリは、殻斗に接する稜が4箇所あるので、殻斗は4裂します。今回見つけた1個の堅果が入った単果は、殻斗に接する稜が3箇所なので、殻斗は3裂していました。
ところが、採集した4個の単果の内の2個は、図8-195-6のように、堅果の稜と稜の間の面に接する部分に僅かな裂け目がありました。もし仮に、僅かな裂け目のある部分に退化消滅した雌花が存在したとすれば、殻斗が4裂しても不思議ではありませんが、これらの殻斗の内側にそのような痕跡は認められませんでした。
一方、単果の殻斗から取り出した堅果を見ていたら、あることに気づきました。図8-195-7は、典型的なブナの2果の堅果と単果の堅果をへそ側から撮影したものです。図中には、これらの堅果が殻斗の中にあった時に、稜と稜の間の面がどこに接していたかを明記しています。
2果のドングリの堅果は、殻斗の中で2つの堅果が接していた面が他の2面よりもやや幅が広く、へそ側から見るとちょうど二等辺三角形に近い形をしています。ところが、単果のドングリの堅果は、3面ともほぼ同じように殻斗に接していたせいか、へそ側から見ると正三角形に近い形をしています。微妙な差かもしれませんが、単果の堅果はこんな所が一味違うんですね〜♪