雑記194. 2015. 9.26
“ ブナ林で見つけました ”
 妙見山 [ 所在地 : 大阪府豊能郡能勢町 ] の山頂から南西側の斜面には、およそ9.5haの敷地にブナ林が拡がっています。ここには、幹周りが2m以上もあるブナが100本以上ありますが、山頂付近には4mを超える巨大なものもあります。

 2005年の秋に訪れた時には、ちょうどブナのドングリが大豊作で、ブナ林の地面にはドングリが層を成すぐらい大量に降り積もっていました。ただ、それ以後はいつ訪れても、その時見た光景に再び出会うことはありませんでした。

 このように、ブナの結実はとっても気まぐれなので、今回もあまり期待せず現地を訪れました。ここのブナはどれも大木なので、地上からだとドングリが実っているのかどうかさっぱり判りませんが、運よくブナ林の外側にある山道に面した個体で、比較的低位置にある枝にたくさんのドングリが結実しているのを見つけました(図8-194-2参照)。


 ブナのドングリが成熟するのはもう少し先ですが、既に落下しているドングリの中にちょっと珍しいものを見つけました。典型的なブナのドングリは、殻斗が四面体形状の堅果を2個包含した2果ですが、今回見つけたのはそこにもう1個の堅果が加わった3果でした(図8-194-3参照)。第3の堅果は、他の2個の堅果に比べてかなり小さめですが、形は同じ四面体でした。

 また、ブナの殻斗は、通常堅果の稜に接する箇所が分裂します。典型的な2果のドングリでは、隣接した2個の堅果が作り出す稜は計4箇所なので殻斗は4裂します。今回見つけた3果のドングリは、第3の堅果の稜が1箇所加わって、計5箇所の稜と接することで殻斗は5つに分裂していました。

 このドングリを目にするまでは、ブナ属で多果ドングリがあるとすれば、カクミガシ属のように3個の堅果が横一線に並んだ形態
(*)を想像していたのですが、実物は全く違っていました。
* 雑記157を参照願います。


 少し想像力をはたらかせてみると、この3果のドングリの幾何学的構造配置から、一つの殻斗の中に多いものは6個の堅果を包含したブナのドングリが存在することが予想されます(図8-194-5参照 : 図中の模式図の線分は堅果を覆う殻斗片、三角形は堅果を表しています)。存在するかどうかは判りませんが、まだ見ぬ形態のドングリを求めて引き続き入念に調査を進めていきます。