雑記019. 2010. 2.13
“ クヌギエダイガタマバチって、こんな虫です ”
 セクション9でドングリに潜む虫のことを掲載してから、以前にも増してドングリの樹や果実に寄生する虫に興味が湧いてきました。
ただ、ネットでこれらの虫について検索しても、あまり詳しい事は記されておらず、ものによっては全くヒットしない場合もあります。昆虫の種類は膨大ですから、もしかすると極端にマイナーなものは一般向けのメディアに展開されていないだけかもしれません。
 そんなわけで、成虫の姿が既に判っているものも含めて、採集した虫瘤
(*)を自分で飼育しながら、実際にそれらの生態を確かめてみることにしました。

 飼育と言っても、そんなに大層なものではなくて、虫達が本来自然の中で生きている状況を小さな植木鉢の中に再現してみただけです。図8-19-2のように、色んな種類の虫瘤を個別に植木鉢に入れて、羽化した成虫が逃げられないように、台所の水切りネット(捕虫網に近いストッキングの様な素材)を被せただけの至極簡単なものです。この状態で自宅の庭に放置して、毎朝中の状況を確認しました。すると、開始から2ヶ月程が経過した今年の1月28日に、1つの虫瘤から待望の成虫が現れたのです。

 寒中早々に現れたのは、クヌギエダイガタマバチ [ 学名:Trichagalma serratae ] の成虫でした(図8-19-3参照)。この虫は、クヌギの枝に産卵してクヌギエダイガフシというドングリに良く似た形の虫瘤(*)を形成し、その中で孵化した幼虫が羽化するまでの期間を過ごします。
 この虫瘤が付いた枝は、昨年の10月30日に兵庫県西宮市にある塩瀬中央公園の雑木林で採取したもので、11月中旬にはこの枝にあったもう一つの虫瘤を解体して、内部の虫室に幼虫がいることを確認してますから、僅か2ヶ月少々で羽化したことになります(**)

 因みに、クヌギエダイガタマバチがどのような昆虫かHPで検索してみると、以下のような記事がありました。

・ クヌギエダイガフシという虫瘤をクヌギの枝に形成する単性世代のタマバチである
・ 晩秋〜初冬にかけて虫瘤から出現する(全て雌だそうです)
・ 単性生殖を行う単性世代と、両性生殖を行う両性世代
(***)の2種類が存在する

 羽化した成虫を見ると、全身は光沢のある黒色で、蜜蜂の様に細かい毛は生えていませんでした(図8-19-4参照)。全体的なイメージは、蜂というよりも羽根蟻のような感じですね。そんなに立派な昆虫ではありませんが、植木鉢に被せていた水切りネットを取り外して、内側にはりついていた1cmに満たないこの虫の姿を目にした時には、すっかりうれしくなってしまいました。本当に子供の時以来です.....自分で虫なんか育てたりしたのは♪
 この調子だと、これから春にかけて他の飼育鉢でも成虫の出現が期待出来そうです。特に、セクション9で紹介したドングリと共に成長する奇妙な幼虫については、ネットで検索する限りではその存在すら知られていないようなので、いつ頃どんな成虫が現れるのかとても楽しみです。
   * 虫瘤とは、昆虫が植物に産卵することによって、植物の組織が異常に発達して生じるコブ状の突起物のことをいいます。
  ** 虫瘤や幼虫に興味のある方は、セクション9を参照願います。
*** 両性世代のものはクヌギハナコツヤタマバチといい、クヌギの花芽にクヌギハナコツヤタマフシという小さな虫瘤を形成します。