雑記188. 2015. 8.20
“ 最もシンプルな殻斗 ”
 シラカシの多果を観察していると、しばしば堅果と堅果の間に異物のようなものが挟まっているのを目にします(図8-188-1、図8-188-2参照)。この異物を拡大してみると、その先端部は微毛で覆われた尻尾のような形をしています。

 実はこれ、堅果と堅果を仕切る殻斗が延伸した先端部ものなのです。図8-188-3は、図8-188-1や図8-188-2に類似した形態の幼果が成長したものですが、これを見ればこの異物が堅果と堅果の間にある殻斗の仕切りの一部であることは明白でしょう。

 ところが、先日深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] を散策していたら、殻斗の仕切りが延伸したと思われる構造物が、前者とは微妙に異なるものが見つかりました(図8-188-4参照)。

 この異物を拡大したところ、殻斗の仕切りが延伸したと思われる先端部分に、輪状の構造物がありました(図8-188-5参照)。殻斗と同じ微毛が密生していることから、堅果は包含していませんが、これは堅果を包含する為に形成された殻斗に間違いありません。

 これまで、殻斗の中に形成された小殻斗として、図8-188-6のようなものを幾度も目にしてきましたが、図8-188-4のようなパッ見殻斗とは思えないものに遭遇したのは初めてです。たぶん、これは最もシンプルな構造の殻斗と言えるのではないでしょうか。


(追記)
 その後の調査の結果、この異物が殻斗から出現した果軸の先端に着いた幼果(堅果を包含しない殻斗)であることが明らかになりました。詳細は、雑記303を参照願います。