雑記187. 2015. 8. 1
“ どうすれば、割れないのだろうか? ”
 成熟して樹から落下したマテバシイのドングリを半年以上放置しておくと、果皮に亀裂が入って見るも無残な姿に変わりはててしまうことがあります(図8-187-1参照)。出来る限りいい状態でドングリを保存することに日々努めている私でも、全てのマテバシイのドングリに対して果皮の亀裂を防ぐ有効な手段はもちあわせておりません。

 このように、成熟して樹から落下したものについては、自然の成り行きに任せるしかありませんが、落下する前のものであれば、果皮の亀裂を最小限に抑える方法がないわけではありません。その方法とは、ドングリが成熟する直前に果軸から強制的に採集するのです。私のこれまでの経験から言うと、亀裂が入りやすい個体から採集したドングリでも、こうすることで亀裂が入りにくくなることがあります。
 強制的に採集するタイミングを具体的に言葉で表現するのは困難ですが、ドングリに軽く手を触れるだけで殻斗から堅果が分離する状態の1〜2週間ぐらい前を想定しています。樹上で堅果が殻斗に繋がった状態でも、指で軽く触れて殻斗から外れるようなものは既に完熟しているから手遅れです。少し力を加えて、殻斗から外れるぐらいの状態(殻斗と堅果を繋ぐ離層が不完全な状態)がベストだと思います。
 このタイミングで、果皮に亀裂が入りやすい個体から採集したものは、採集から半年以上が経過しても果皮に亀裂が入らないケースが多々ありました(図8-187-2参照)。

 離層が不完全な状態で強制的に採集することで、なぜ果皮に亀裂が入らないのか理由はよくわかりません。成熟した堅果の果皮は複数の層(*)から構成されているので、各層の膨張率の違いによって亀裂が入りやすいことが予想されます。それに対して成熟前の果皮は、層が明確に形成されていない(各層が相互に癒着していた単一構造)ので、成熟したものに比べて亀裂が入りにくいのかもしれません。
 マテバシイのドングリをきれいな状態で保存したいと思っておられる方は、一度試してみてはいかがでしょう。
* セクション10の果皮の項を参照願います。