雑記186. 2015. 7.18
“ 早く大きくな〜れ♪ ”
 コナラは、国産のドングリの樹の中で最も繁栄しているものの一つです。里山を構成する雑木林の主役であることは言うまでもありませんが、都会のど真中にも公園樹としてたくさん植栽されています。このように、私達にとって最も馴染みのあるドングリの樹ですが、なぜか多果ドングリを結実した姿を一度も見たことがありません。

 かれこれ十年来、いろんな樹種の多果ドングリを見てきましたが、コナラについては服部緑地公園 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] にある個体に多果の雌花がいくつか咲いているのを一度目撃しただけです(*)

 その個体は、4月下旬に開花した後、5月下旬〜12月上旬にかけて繰り返し開花する特殊なもの(**)で、多果の雌花は5月下旬以降に開花した花軸で見つけました(図8-186-2参照)。ただ、残念ながらそれらは開花してから2ヶ月ぐらいで全て枯死してしまいました
   * 雑記160を参照願います。
 ** 季節外れのコナラの花については、セクション22-4を参照願います。

 ** 雑記160を参照願います。
 一昨年、この個体を観察していた時には多果の雌花は咲いていなかったので、毎年見られるわけではなさそうです。ただ、一度でも多果の雌花を咲かせたことがある個体は、これまでの経験から言うとその後も必ず開花するので、今年も4月下旬頃からこの個体の開花状況をチェックしてきました。

 その結果、想定していた5月下旬以降に咲いた花軸に多果の雌花は見られなかったのですが、4月下旬に開花した花軸の中に1個だけ2果の雌花が咲いているのを見つけました。そして、発見から2ヶ月余りが経過した今もなお樹上で成長し続けており、 既に殻斗の横幅は10mmを超え、中から艶々した緑色の堅果が顔を出していました(図8-186-3参照)。

 多果は幼果の段階でその大半が枯死してしまうので、これ以上大きくなる補償は何もありません。ですが、この状態でこの2果を採取してしまうのはあまりにも惜しい気がしてなりませんでした。かつて、採取するタイミングを逸したためにウバメガシの2果のドングリをゲットし損ねたにがい思い出(***)がありますが、もうしばらくこのままの状態で見守ることにしました。早く大きくな〜れ♪
*** セクション3-1-2 ウバメガシの項を参照願います。