雑記185. 2014.12. 6
“ 子沢山のアラカシ ”
樹上にある成熟したドングリで、しばしば果皮に大きな亀裂が入ったものを目にします。果皮に亀裂が入る理由は様々ですが、一つの要因として複数の種子が同時に発現したことが考えられます。
ドングリの元になる雌花には複数の胚珠が包含されています。普通はそれらの中の1つの胚珠が受精して、1つの堅果の中に1つだけ種子が入ったドングリが誕生します。ところが、稀に複数の胚珠が同時に受精して、その数だけ種子をもつ子沢山のドングリが誕生することがあります。因みに、子沢山のドングリが生まれやすいのはコナラ属とクリ属で、とりわけアラカシやウバメガシでは3つ子や4つ子のドングリも珍しくありません。
今回、兵庫県三田市のはじかみ池公園で、子沢山のドングリが生まれやすいアラカシの中でも極めつけの個体を見つけました。なんと、樹上に結実したドングリの半数以上に果皮の亀裂が見られ、それらの中に3個以上の種子をもつものが大量に含まれていました(図8-185-2参照)。
この個体から、果皮に亀裂が入ったドングリを200個採集して解体したところ、全てのドングリに複数の種子が入っており、それらの中に3個の種子をもつものが85個、4個の種子をもつものが24個もありました。なんと、全体の半数以上を3個以上の種子をもつドングリが占めていたのです。
ウバメガシの4つ子のドングリについて雑記38で紹介して以来、アラカシとウバメガシについては、しばしば子沢山のドングリを目にしてきました。コナラ属の子房は通常6〜10個程度の胚珠を包含している(*)ので、原理的には5つ子かそれ以上のドングリが誕生しても不思議ではありませんが、5つ子以上のものを目にしたことは一度もありません。もし読者のみなさんで5つ以上の種子をもったドングリを見つけた方がいらっしゃいましたら、ぜひ知らせて下さい。
* コナラ属の子房は、3〜5枚の心皮で構成されたものが一般的です。