雑記177. 2014.10.31
“ 辛うじて残ったもう1つの堅果 ”
変形ドングリ “ 変形くん ” (*)は、殻斗の元になる器官に咲いた複数の雌花の内、1つを除いて全てが退化消滅して残った1つが結実したものです。因みに、退化消滅するのは肉眼では見ることが出来ないぐらい極微な単一雌蕊をもつ雌花であると私は推測しています。この仮説を構築するのに必要な個々の事象については、このHPの中で繰り返し証拠となるものを提示してきましたが、想定している単一雌蕊があまりにも小さいので、それが消滅した雌花序が変形くんになることを実証するのは容易ではありません(**)。
そこで、 現段階では仮説を少しでも真実に近づけるために、様々な樹種から変形くんに残された多果の痕跡をデータとして積み重ねていく作業を進めています。そして今回、港湾緑地南公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のウバメガシから、仮説を立証するのに有効なあたらなデータを取得するのに成功しました。
* セクション3-2を参照願います。
** 雑記158、162を参照願います。
ここにはたくさんのウバメガシが植栽されていますが、その中に図8-177-1のような変形くんを大量に結実した個体がありました。それらを1つ1つ丹念にチェックした結果、殻斗に亀裂が入ったところに、もう1つの小さな堅果が残存した2果のドングリを見つけました(図8-177-2参照)。
この2果のドングリから殻斗を取り外すと、殻斗の内側にある離層の痕跡が延伸した先に独立した緑色の小さな堅果(堅果2)がありました。このドングリの場合は、殻斗の外側に小さな堅果の一部が露出していたので、すぐに2果であることが判りましたが、中には小さな堅果が殻斗の内側に隠れて外からは見えないものもありました(図8-177-4参照)。
これらのドングリを見ていると、2果のドングリと変形くんの違いは、もう1つの小さな堅果が存在するか否かだけであり、両者は殻斗の元になる器官に咲いた2つの雌花をもつ雌花序が成長した別の姿である可能性が高いと考えられます。
話は変わりますが、この個体には図8-177-5の様に殻斗が異様に変形したドングリが幾つか見られました。それらのドングリから取り外した殻斗の内側をよく見ると、殻斗の変形箇所に近い部分に、もう1個の小さな堅果があるものが見つかりました(図8-177-6参照)。
以前、殻斗の輪が分断する要因の一つに多果の発現が関与していることを報告しました(***)が、図8-177-6の異様な形態の殻斗についても多果の発現が関与しているのかもしれません。
*** 雑記151を参照願います。