雑記172. 2014. 9.28
“ 珍しいマテバシイの幼果 ”
マテバシイのドングリは、1つの殻斗に1〜3個の堅果が包まれた形態が一般的ですが、昨年の秋に4個乃至5個を包含した幼果を見つけました(図8-172-1参照)。同じマテバシイ属のシリブカガシは、1つの殻斗に最大で5個の堅果を包含しますが、マテバシイで4個以上の堅果を包含したものはこれが初めてです。
樹上で確認出来る範囲に、類似した形態のものが26個もありました。しかも、1つの殻斗に堅果が4個以上あるものは、その中の2個(図中赤丸で囲んだ部分)がかなり近接していたので、これらが成長してどのような形態のドングリになるかとても興味が湧いてきました。
あれから1年が経過して、先日待ちに待ったドングリの姿を確認してきました。26個あった幼果の内の12個は不稔でしたが、残りの14個は無事に成長していました(図8-172-2参照)。
2個の堅果がかなり接近していた幼果は、おそらく2個の堅果が合着したようなドングリ(図8-172-5 ケース3参照)になるだろうと想像していたのですが、予想に反して2個の堅果は合着しておらず、全て殻斗の1つの開口部に2個の堅果が独立した状態で包含されていました。
図8-172-3にこれらの殻斗から取り外した堅果の例を示します。へその一端を中心に堅果が捩じれており、その部分の周辺の果皮に若干の変質が見られます。これらの特徴は、図8-172-4に示すマテバシイの変形ドングリと非常に良く似ています。
これまで、図8-172-4にあるマテバシイの変形ドングリもコナラ属の変形ドングリ “ 変形くん ” と同じメカニズム(*)で誕生すると考えてきましたが、今回の調査でこの考えに間違いないことを確信しました。
参考までに、私が考えているマテバシイの雌花序とドングリの関係(推定メカニズム)をまとめておきます(図8-172-5参照)。
(注) 図8-172-5のケース4で、退化消滅する雌花が普通の複合雌蕊になっていますがこれは誤りで、現在は極微な単一雌蕊の雌花を想定しています。