雑記017. 2010. 1. 8
“ 第三の大量多果ドングリを結実するシラカシを発見! ”
 兵庫県三田市にある深田公園は、約19haの敷地面積をもつ広大な公園です。同園については、このHPでも度々取り上げてきましたが、多果ドングリを大量に結実するシラカシが多数植栽されているところが魅力であり、これまでに年間100個以上の多果ドングリを結実した実績のあるシラカシを2本も確認しています。
 ただ、園内があまりにも広大であるが為に、遠くから俯瞰するだけで、じっくりと観察出来ていない樹が少なからずありますので、私が知らない所で密かにたくさんの多果ドングリを結実しているシラカシが、まだまだあるのかもしれません。

 今年は年明け早々天候に恵まれましたので、元旦から近隣にある樹木を隈なく見て歩くことが出来ました。それが功を奏したのか、深田公園の中で過去2年間ノーマークだったシラカシから、多果ドングリが大量に落下しているのを発見しました。
 落下してから2ヶ月ぐらいが経過したようで、ほとんどの堅果は果皮が裂けたり、黒ずんで腐敗が進行していました。ただ、殻斗は堅果に比べると耐久性に優れているせいか、比較的状態が良好だったので、それらの採集検体数からおよその結実量を見積もることが出来ました。

 2日間に亘って採集した結果、驚くべきことにこのシラカシは、昨シーズン中に400個以上もの多果ドングリを結実していたことが明らかになりました。図8-17-2は採集したドングリの一例です。全体の7割は、殻斗の大きさが5〜8mm程度の幼果でした。実は、これよりも小さくて採集せずに放置してきたものがたくさんあったので、昨年結実した多果ドングリの総数は、優に500個を超えていたのではないかと思います。

 採集したものを分類整理してみると、2果のドングリが245個、3果のドングリが158個ありました。セクション3-1-3に従って多果ドングリの形態を分類したところ、表8-17-1の様な結果が得られました(*)
 この表から、落下数量が多い割に、それらの形態は特定のタイプに限定されており、2果、3果共に分離型の殻斗(2果:Type3、4 3果:Type10〜15)が全く存在しないことが判ります。形態の多様性の点からすると、雑記15で紹介したシラカシが如何に優れているかということを、あらためて知らされました。

 今回見つけたシラカシを加えると、同園で年間100個以上の多果ドングリを結実した実績のある樹は、全部で3本になりました。ドングリの生態をより深く理解する為にも、今年の秋からは例年よりも広範囲で、より入念にドングリの樹を調査していきたいと思います。

* 多果ドングリの殻斗の形態を分類する上で使用している略式記号については、雑記015の表8-15-1を参照願います。