雑記163. 2014. 7.29
“ 雄花は8月以降に咲くみたいです ”
 コナラの中には、普通の個体と同様に4月に開花した後、それとは異なる形態の花序を12月頃まで繰り返し開花するものが少なからずあります。今回、服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] でこれに類似した個体を観察していたら、花軸に雄花が咲いていないことに気づきました(*)

 ほぼ同時期に、高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] と宮山台 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] の個体についても確認した結果、やはり雄花は咲いていませんでした。それ以後、他でも類似の個体の開花の様子を観察してきましたが、咲いていたのは雌花や両性花ばかりで雄花は皆無でした。
* 雑記160を参照願います。

 図8-163-1〜図8-163-3は、7月下旬に高塚山緑地の個体で撮影した開花の様子です。昨年の9〜12月に観察した時には、この個体にも雄花が咲いていた(図8-163-4参照)ことから、季節外れに開花するコナラは5〜7月には雌花(もしくは両性花)だけが咲いて、8月以降に雌花と雄花の両方を咲かせるのかもしれません。

 季節外れに開花するコナラの花序形態が個体間で酷似していることは、これらの開花が偶然の産物ではなく、何か重要な意味をもつことは明らかでしょう。おそらく、コナラ属の花序が現在のような形態(雄花軸 :尾状花序、雌花軸 :穂状花序)になる以前の姿を考える上で、何か重要なヒントが隠されているような気がしてなりません。

 これまでの調査結果から、5月以降に咲いた雌花が結実しないのは、季節外れに開花するコナラの個体数が非常に少ないことや、花粉を提供する雄花が8月頃まで咲かないことが理由として考えられます。これを検証するには、他の個体から花粉を採集してきて、これらの雌花に強制受粉させて結実の有無を調べてみるのがいいかもしれません。ブナ科の樹木の花粉の寿命についてはよく判りませんが、一般に乾燥させた花粉を低温保管すれば、数ヶ月ぐらいは活性が保たれるようなので、来年の4月以降に機会があれば駄目もとでトライしてみます。