雑記162. 2014. 7.16
“ 仮説を補強するあらたなデータ ”
(仮説)
広義の多果ドングリである変形ドングリ “ 変形くん” (*)は、殻斗の元になる器官に咲いた複数の雌花の内、1個を除く全てが退化消滅した結果誕生したものである
これは、変形ドングリ “ 変形くん ” の素性について私が提示した仮説です。この仮説を立証するために、これまで様々な角度から調査を進めてきました。その結果、2果の雌花を構成する一方の雌花が、成長過程の早期に退化消滅することが現実に起こりうる事をつきとめました(**)。
現在、これまでの観察データを基に、退化消滅する雌花が胚珠を包含しない極微な単一雌蕊(**)の雌花であると想定し、それが実際に消滅する姿を捉えることに注力しています。ただ、想定している雌花は肉眼では検知出来ない微細なものであることから、調査は難航しています。
* 変形ドングリ “ 変形くん ” についてはセクション3-2を参照願います。
** 雑記128、130、131、158を参照願います。
変形ドングリ “ 変形くん ” は広義の多果ドングリなので、多果を発現しやすいシラカシの個体から無作為に幼果を採集してきて、消滅寸前の微小な単一雌蕊の雌花の存在をひたすらチェックするという作業を繰り返してきた結果、先日採集した中からそれらしきものが1つ見つかりました(図8-162-1、図8-162-2参照)。
大きな花柱(複合雌蕊の花柱)の脇にある茶色く変色したものがそれです。太さは僅か50ミクロン [ =1mmの1/20 ] 弱で、ピンセットで軽く触れると簡単に脱落してしまいそうでした。たぶん、これは枯死寸前の状態でしょう。
このサイズのものが開花後1.5ヶ月ほどで枯死寸前である状況から判断すると、私が想定している極微な単一雌蕊(10〜20ミクロン程度)なら、もっと早い時期(開花後1か月以内)に退化消滅する可能性が高いと思われます。それに、今回確認した単一雌蕊よりもさらに小さいものになると、大きな花柱(複合雌蕊の花柱)の下部を覆っている花被片の中に埋没して、外観からその存在すら確認できないかもしれません。
いずれにせよ、極微な単一雌蕊の消滅する姿を直接観察するのは極めて難しいことが予想されるので、間接的に立証する別の手法を現在思案中です。
(補足事項)
変形ドングリ “ 変形くん ” の元になる雌花序の形態(推定メカニズム)
殻斗の元になる器官に咲いた2つの雌花が個別に花被/花床で包まれた場合 [ 図8-162-3 上段 ] 、単一雌蕊の雌花が退化消滅しても変形ドングリ “ 変形くん ” にはなりません。なぜなら、2つの雌花が花被/花床によって分離されているので、残った複合雌蕊の雌花は単一雌蕊の雌花が消滅した痕跡(癒着した痕跡)を残さずに成長するからです(***)。
一方、殻斗の元になる器官に咲いた2つの雌花がまとめて花被/花床に包まれた場合 [ 図8-162-3 下段 ] 、単一雌蕊の雌花が退化消滅すると変形ドングリ “ 変形くん ” になります。なぜなら、雌蕊同士が合着するので、残された複合雌蕊の雌花には両者が癒着した痕跡が残るからです。
*** 成長した堅果のへその一部が欠損する可能性があります。