雑記158. 2014. 5.21
“ 極小の単一雌蕊は確かに存在した! ”
変形ドングリ “ 変形くん” は広義の多果ドングリであり、殻斗の元になる器官に咲いた複数の雌花の内、成長過程で1つを除いて退化消滅した結果誕生したものである。(*)
 これは、このHPの中で私が提示した仮説です。この仮説を立証するには、退化消滅する雌花の具体的な構造を明らかにしなければなりません。私は、それに該当する雌花として極微な単一雌蕊の雌花を想定し、これまでその存在の有無について調査してきました。

 変形くんは突発的に発生するものなので、ある程度的をしぼって調査しないと核心に迫ることは出来ません。私の仮説が真実ならば、多果を発現しやすい個体の雌花の中に、想定している極微な単一雌蕊の雌花が存在するはずですから、そういう個体から根気よく雌花を摘出してきて、実体顕微鏡でその有無を確認してみることにしました。

 今回調査の対象に選んだのは、多果の雌花や両性花を発現しやすいアラカシの個体です(図8-158-1 右側参照)。アラカシはシラカシと違って多果を発現することが極めて稀です。ところが、アラカシの中には花軸の短い(雌花序が2〜3個あるもの)典型的な個体以外に、花軸の長い(雌花序が5〜10個あるもの)ものが併存しており、それらの中にしばしば多果の雌花や両性花を大量に発現する個体があります。図8-158-1の右側が正にそれで、多果の雌花はごく僅かしかありませんが、雌花の半数近くが両性花という特殊な個体です(図8-158-2参照)。
* 雑記128を参照願います。

 この個体の雌花を一つ一つ丁寧に観察してみると、大きな花柱(複合雌蕊の花柱)の脇に直径が数10μm〜100μm程度の微小な単一雌蕊が見つかりました(図8-158-3、図8-158-4参照)。これで、微小な単一雌蕊が私の想像の産物ではなく、現実に存在することが明らかになりました☆

 今後、多果を大量に結実するシラカシについても同様の調査を実施しますが、あとはこれらの単一雌蕊の雌花が成長していく過程で実際に退化消滅するのを確認しなければなりません。しばらくは、運を天に任せてひたすらこの単調な作業を続けていくしか無さそうです。