雑記157. 2014. 4. 1
“ 進化系統図のどこに位置するの? ”

 図8-157-1は、殻斗や果実の形態を元に、Formanが提示したブナ科の進化系統図(*)です。Formanが仮定した3つの殻斗片をもつ三角錐の果実が3個連なったものが全てのドングリの祖型であり、そこから殻斗片(図中の▲の回りにある線で表示)が合着/退化したり、堅果数が退化していくことで、様々な種類のドングリが誕生した様子を表しています。

 ただ、我々が一般に目にする典型的なドングリについては、この図でほぼ説明がつくのかもしれませんが、進化の過程で消滅する運命にあったはずのコナラ属の多果ドングリをこの図の中に当てはめようとすると、少し具合が悪いことに気付きました。
* DNA解析の結果、ナンキョクブナ属はブナ科のファミリーには属さないようなので、この図では省略してます。

 図8-157-2に、典型的なコナラ属の多果ドングリ(3果)の形態を示します。この内、1つの殻斗が3つの堅果をまとめて包含したもの(図中左側)については、図8-157-1にあるカクミガシ属からコナラ属への進化の途中に挿入することが可能です。ところが、もう一方の1つの殻斗が3つの堅果を分けて包含したもの(図中右側)については、この図の中に挿入出来る場所が無いのです。

 なぜなら、祖型からトゲガシ属、カクミガシ属へと進化する過程で、堅果同士を仕切っていた殻斗片が退化し、最終的に周囲の殻斗片が全ての堅果をまとめて包含した構造に向かっているとしておきながら、カクミガシ属からコナラ属に進化する際に、再び殻斗が各々の堅果を分けて包含したのでは話になりません。

 敢えて、コナラ属の多果ドングリを図8-157-1の中に挿入すると、図8-157-3のようになりました。カクミガシ属から進化したコナラ属とは別に、マテバシイ属と同様に、祖型から直接コナラ属が進化するという系統が新たに発生してしまいました。
 
 そもそも、マテバシイ属やコナラ属の椀型形状の殻斗は、本当に複数の殻斗片が合着したものなのでしょうか?クリ属やシイ属、ブナ属の殻斗のように、複数の殻斗片から構成されていると思われるものについては、この図の進化系統で説明がつきそうですが、椀型形状の殻斗をもつマテバシイ属やコナラ属のドングリまでこの図の中に包括しようとするのは、少し無理があるように思います。