雑記156. 2014. 2. 2
“ 針状堅果の起源は単一雌蕊 ”
 セクション17の異形多果ドングリの中には、ドングリとは思えないような奇妙な形をしたものがあります。その1つに細長い針状の堅果があります(図8-156-1参照)。この堅果は、多果ドングリを構成する1個の堅果ですが、稀にしか発現しないので、これまでに採集したのは僅か数個しかありません。
 しかも、全て地面に落下したものだったので、繊細な堅果の首回りはどれも欠損しており、針状の堅果の花柱について確かな情報を得ることができませんでした。

 ところが、昨年の秋に深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] のシラカシを探索していた時、幸運にも針状の堅果をもつ2果を樹上で目撃したのです。早速これを採集して実体顕微鏡で観察したところ、堅果の首回りには損傷が見られず、花柱が1本しかないことが確認できました。この事から、針状の堅果が単一雌蕊の雌花に由来することが明らかになりました(図8-156-2参照)。

 針状の堅果から、その元になる単一雌蕊の雌花の寸法を正確に割り出すことは出来ませんが、花柱の寸法は花と果実でほとんど変わらず、また花の時は花柱と雌花の直径も同等であることから推測すると、この単一雌蕊の雌花の直径は0.2〜0.3mm(*) ぐらいだったと思われます。
   * 因みに、3本の花柱をもつ典型的な複合雌蕊の雌花の直径さは1〜1.5mmぐらいです。
 私は、多果の雌花が開花してから比較的早い時期に、多果を構成する複数の雌花が1つを除いて退化消滅することによって変形ドングリ “ 変形くん ” が誕生するという仮説をこのHPで提示しています(**)。そして、仮説にある退化消滅する雌花として微細な単一雌蕊の雌花を想定(***)しているのですが、残念ながらまだそれを実証できていません。

 針状の堅果の元になる単一雌蕊の雌花は確かに微細ですが、それでも退化消滅することなく堅果としてその姿を留めています。だとすると、退化消滅するような単一雌蕊の雌花というのは、一体どれぐらい小さなものなのでしょうか?
  ** セクション3-2-1を参照願います。
*** 雑記128を参照願います。