雑記153. 2013.12.14
“ 間違って産卵したんでしょうか? ”
 はじかみ池公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] は、アラカシのドングリの形態の多様性に関して県内でも指折りの場所です。先日そこで、殻斗の内側に奇妙な異物があるドングリを見つけました(図8-153-1参照)。堅果の表面に刻まれた窪みを見ると、この異物が形成された時期は、殻斗の裾の部分から堅果が顔を覗かせて間もない8月〜9月頃ではないかと思われます。

 殻斗の内側に異物があったのはこの1個だけでしたが、同じ個体から落下したドングリの中にはタマバチの仲間が寄生した堅果(*)がたくさん見られました。この異物を実体顕微鏡で拡大してみたところ、同時に採集した堅果の内側に形成されたタマバチの虫瘤と形や大きさが非常に良く似ていることが判りました(図8-153-2、3参照)。
  * 雑記079、もしくはセクション9-3を参照願います。

 この異物を切開すると、中に体長が2mmに満たない小さな幼虫が一匹入っていました(図8-153-4参照)。これで、この異物が虫瘤であることがはっきりしたのですが、驚いたことにその姿形は、素人目には区別がつかないぐらい堅果の内側に寄生したタマバチの幼虫(図8-153-5参照)に酷似していました。

 一つしかない虫瘤を解体してしまったので、今回はこの幼虫が成長した姿(成虫)を確認することが出来なくなってしまいました。ただ、この個体には殻斗に寄生した虫瘤が他になかったことや、幼虫の姿形が堅果に寄生するタマバチに酷似していたことから、堅果に寄生するはずのタマバチが誤って殻斗の上から殻斗の内側に産卵してしまったとしか思えない状況です。

 人生(虫生)の一大イベントとも言える産卵で、このような重大な過ちを犯してしまう “おバカなタマバチ” が、本当にいるのでしょうか?