雑記142. 2013.10.28
“ 見事に変形しています ”
兵庫県西宮市にある塩瀬中央公園(*)には、数え切れないぐらいたくさんのコナラが植栽されています。それらは樹高が2〜3mぐらいのものが多く、個体差も含めて開花から結実までの様子をじっくりと観察出来るので、ここには一年を通じて足繁く通っています。
ここのコナラは、ほぼ隔年に大量のドングリを結実しますが、ちょうど昨年が豊作だったので、今年はほとんどの個体でドングリの姿を目にすることが出来ませんでした。ところが、そんな中で普段なら気にも留めないような樹高2m弱のコナラに、珍しくたくさんのドングリが実っていたのです(図8-142-1参照)。
* 雑記103を参照願います。
この個体に結実していたのは、言葉では形容しがたいほど素晴らしい形をした変形ドングリ “ 変形くん ” (**)でした。どの枝でもやたらと目につくので数えてみたら、全体の70%以上 [ 変形くん/総数=105個/162個 ] が “ 変形くん ” だったのには驚きました。
豆まきの大豆ぐらいの大きさのドングリが、どれも高さ方向に押し潰したような形をしていて、その可愛らしい姿を見ていると何だかとっても楽しい気分になってきました♪
** “ 変形くん ” というのは、ある規則性をもって堅果が一方向に曲がったドングリに対して私がつけた名称です。詳細は、セクション3-2を参照願います。
“ 変形くん ” とは、殻斗の元になる器官に咲いた複数の雌花の内、1個を除いて退化消滅したことによって生れたものであると私は考えています。
当初この仮説は、多果との形態の類似点から推測したものに過ぎなかったのですが、その後の調査で雌花が早期に退化消滅する事象が立証されたことにより、以前よりもはるかに真実に近づきつつあります(***)。あとは、退化消滅する雌花の具体的な構造が明らかになれば、この仮説を真実に昇華することが出来るのですが、これがなかなか一筋縄ではいかないのです。
一つのアイデアとして、“ 変形くん ” を大量に結実する個体(少なくとも総結実量の半数以上)に咲いた雌花の構造を徹底的に分析すれば、解法への糸口が掴めるかもしれません。ただ、毎年コンスタントに “ 変形くん ” を大量に結実する個体なんて、そう容易くは見つかりません。このコナラの個体にしても、来年以降も今年のように ” 変形くん ” を大量に結実してくれる保証は何もありません。現時点では、ドングリに関するデータを隈なく精査して、突破口となるアイデアを模索している段階です。
*** 雑記130を参照願います。