雑記014. 2009.12. 8
“ 6匹も入っていました ”
 私が収集しているドングリは、基本的に状態のいいものだけです。拾ってきたドングリの中で、堅果の表面に明らかに虫の産卵孔があるものは、そのまま自宅の裏手にある雑木林に廃棄します。選別した後のきれいなドングリは、プラスチック製のオープンケースに入れて、自分の部屋の一角で自然乾燥します。
 産卵孔を見落としたドングリをそのままにしておくと、しばしば虫達(シギゾウムシ等)が、内側からドングリの殻(果皮)を齧る“ カリカリ...カリカリ....”という音が、部屋の隅から聞こえてきます。

 このように、ある程度きっちりと選別しているにも関らず、ある特定のオープンケースから3日間に亘って連日ドングリの殻を齧る音が聞こえてきました。変に思ってケースの中を覗いてみると、1つのコナラのドングリから6匹ものシギゾウムシの幼虫が出て来て、ケースの下でモゾモゾしていました。
 これまで、1つのドングリに4匹のシギゾウムシの幼虫が入っているのを見たことがあります。ところが、このコナラのドングリには、なんと6匹も入っていたのです(図8-14-1参照)。
 てっきり、チェックミスのドングリが混ざってしまったと思って、このドングリの表面を見てみると、やはり産卵孔らしきものを1つ見落としていました(図8-14-2参照)。ただ不思議なことに、それ以外の産卵孔は、どこを探しても見つかりませんでした。

 シギゾウムシは、ドングリが成熟前のまだ緑色をしている時に、殻斗と堅果の境目付近の果皮が柔らかい部分に口吻で孔を開け、そこに産卵管を差し込んで産卵します。ただ、へそと果皮の境目辺りに産卵した場合は、外観からは孔の存在は確認出来ません。このドングリも、きっとその辺にうまい具合に産卵されたような気がします。
 それにしても、このドングリは随分と匠の技をもつシギゾウムシ達に見込まれたものですね。落下する前は、虫達にとってこの上無くすばらしいドングリだったことでしょう。

 このドングリを割って中を見ると、変色した小さな種子の塊が3つ入っていました。それらは、エキスを吸い尽くされたせいか、指で触るとボロボロに砕けてしまいました(図8-14-3参照)。こんな狭い所に6匹も幼虫が暮らしていたのですから、彼らは想像を絶する過酷な食料争奪戦を生き貫いてきたことでしょう。この小さな生命の逞しさに比べれば、人間様の何と卑弱なことか...。

 図8-14-1のコナラのドングリは、大阪市大理学部附属植物園で採集したものですが、同じ樹から採集した別のドングリで、へそのど真ん中から脱出してきた幼虫がいました(図8-14-4参照)。へそは果皮の倍近い肉厚があるので、幼虫は普通この部分を避けて脱出してくるのですが....よく肥えていて、とっても元気な幼虫でした♪