雑記139. 2013.10.16
“ 恐るべし、山田池公園! ”
 昨年に続き今年の秋も、山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] ではたくさんのマテバシイ(=39体)が開花していました (*)。秋に開花するマテバシイの姿は、現在までに山田池公園を除くとシイの実公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] (**)でしか確認出来ていません。ただ、シイの実公園で秋に開花したマテバシイは、全部で130体ある中で昨年は3体、そして今年はその3体の内の1体だけで、山田池公園とは比べものにならない微々たるものでした。

 これらの状況を見ていると、山田池公園にはブナ科の樹木に対して季節外れの開花を促す何らかの力が作用してような気がしてなりません。そこで、これまでは同園のマテバシイの開花だけ着目してきたのですが、他のブナ科の樹木についてもこの時期の開花の有無を調査してみることにしました。
  * 雑記138を参照願います。
** 雑記092を参照願います。

 
 その結果、秋咲きのマテバシイが密集するエリアに近い8体のスダジイが開花しているのを見つけました(図8-139-1〜図8-139-3参照)。どの個体にも、この春に開花した果軸が併存していたので、少なくともこれらの個体は今年の春と秋の2度開花したことが判りました。

 秋に咲いた花軸のある新枝の数は、個体によって数本〜20本前後のバラツキがありました。しかも、それらのほとんどは樹の頂上付近に集結していました(図8-139-2参照)。また、数日前に咲いたばかりの雄花軸(図8-139-3参照)もありましたが、大半は既に脱落していて雌花軸だけの新枝が目立ちました。たぶん、これらの個体は9月中頃から開花が始ったのではないかと思われます。


 ところで、シイ属全体で見た場合、1年に2度開花するという現象は珍しいものなのでしょうか。マテバシイ属の花期を調べるのに利用した “ Flora of China ” [ HP表紙にあるリンク集に収録 ] には、中国全土の温帯から熱帯域に分布する様々なブナ科の植物が紹介されており、その中には30種類のシイ属(全体で約100種)も含まれています。そこで、ここに掲載されているシイ属の仲間についてそれぞれの花期を調べてみました。

 その結果、残念ながらどの種類にも1年に2度開花するという記述は見当たらず、スダジイと同様に4〜6月頃に開花して、翌年の8〜11月に実を結ぶものがほとんどでした。ただ、以下の2種のように夏〜秋にかけて開花するものもありました。
Castanopsis globigemmata 
 8〜9月に開花して、翌年の10〜11月に結実する。

Castanopsis wattii 
 7〜9月に開花して、翌年の8〜10月に結実する。
 シイ属の中にも、このような種が存在するということは、山田池公園で今年の秋に開花したスダジイも、来年の秋には実を結ぶ可能性が十分にあると考えられます。ただ、同園のスダジイはマテバシイに比べると1体当たりの開花数が極めて少ないことから、結実した姿を見ることができるかどうかは微妙です。