雑記138. 2013.10. 9
“ 咲き乱れる秋の花 ”
 山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] に行ったら、今年の秋もマテバシイが花を咲かせていました(*)。但し、昨年とは比較にならないぐらい開花した個体数が多く、現時点で同園に植栽されている70体余りのマテバシイ(私が把握している個体)の内、なんと半数以上に当たる39体が開花していたのです!
   * 雑記094を参照願います。

 私が、初めてマテバシイが秋に咲いている姿を目撃した時は、該当する個体数が極僅かだったので、これは一部の個体に見られる特殊な事象だと考えていました。
 ところが、今年の山田池公園の状況を見ていると、そういうふうに考えるのは適切ではなく、むしろ “ マテバシイは春に開花するものが一般的であるが、中には秋にも開花する個体が少なからずある ” と解釈した方が、この種の生態を理解する上でベターではないかと思えるようになりました。
 昨年の秋に同園を訪れた時(2012年9月22日)には、6体しか開花を確認出来ませんでしたが、今年の様子を見ていると、その数があまりにも少な過ぎるように感じられました。もしかすると、私が確認した時点から10月以後も別の個体で続々と開花していたのかもしれません。それを確かめるべく、今回あらためて全ての個体をチェックして廻ることにしました。

 マテバシイの場合、新枝の先端部分に穂状の花軸(果軸)が立ち、次の開花期にそこからまた新枝が伸びて、同じ様にその先端部分に花軸(果軸)が立つことを繰り返します(**)。ですから、1つの枝に成熟したドングリを付けた花軸(果軸)が2世代分あれば、その個体が昨年の秋も開花していたことが判るのです。

 但し、春と秋に2度開花したものについてはこの方法で判別出来るのですが、春に開花せず秋にだけ開花したものについては、残念ながらこの方法では判別出来ません。そういうわけで、厳密に昨年の秋に開花した個体だけを選別することは出来ないので、とりあえず春と秋に2度開花したものだけをカウントしてみました。
 その結果、全部で18体がそれに該当することが判りました。それらの中には、昨年の春と秋、そして今年の春と秋に4季連続で開花した結果、1つの枝に4世代の花軸(果軸)が併存するものも見つかりました(図8-138-2参照)。
 ** 新枝と花軸との関係については、雑記136の図8-136-1を御覧下さい。


 ところで、マテバシイ属全体で見た場合、1年に2度開花するという現象は珍しいものなのでしょうか?HPの表紙のリンク集にある “ Flora of China ” には、温帯から熱帯域に広く分布するマテバシイ属(全体で約300種)の樹木の中の100種類余りの生態が網羅されています。ここに掲載されているものについて種類別に花期を調べてみると、マテバシイ属は他のブナ科の植物とは比較にならないぐらい開花のバリエーションが豊かであることが判りました。また、数は少ないのですが、1年に2度開花する種も存在することが判りました。
 以下に、花期が特異なものについて幾つか例を挙げておきます。
Lithocarpus handelianus 
 5月と8〜10月の年2回開花し、翌年の夏〜秋に結実する。

Lithocarpus konishii 
 4月と8月の年2回開花し、翌年の夏〜秋に実結実する。

Lithocarpus tephrocarpus 
 開花期が6月〜10月と長く、翌年の夏〜冬にかけて結実する。


Lithocarpus cleistocarpus 
 開花期が6月〜10月と長く、翌年の夏〜冬にかけて結実する。

Lithocarpus corneus 
 1年中開花(5〜7月が開花のピーク)して、開花してから約1年後に結実する(***)
*** 掲載文の表現が曖昧な為、同じ個体が年に複数回開花するのか、あるいは個体によって年に1度の花期が異なるのかは不明。
 “ Flora of China ” に目を通していると、マテバシイ属の樹木は潜在的に花期を自由自在にコントロールする能力を保持しているように思えてなりません。たぶん、花期をコントロールしているスイッチの正体が明らかになれば、山田池公園に植栽された多くのマテバシイと同じ様に、どんな個体でも秋に花を咲かせることが出来るようになるのではないでしょうか。