雑記137. 2013.10. 3
“ 突如現れた多果の群れ ”
 2005年の秋に、荒山公園 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] で多果が鈴生りのスダジイ(*)を目撃してから今年で8年が経ちました。それ以来、数10個程度の多果を結実した個体には何度かお目にかかりましたが、荒山公園の個体と同レベルの多果多産のものに遭遇することはありませんでした。
 * 雑記065を参照願います。

 ところが、先日自宅から原付で15分ぐらいのところにある蒲池公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で、荒山公園の個体と同等か、あるいはそれを上回る多果多産のスダジイが見つかりました(図8-137-1、図8-137-2参照)。

 但し、この個体は私が今回初めて目にしたものではありません。実は、何年も前から同園で探索してきましたが、この個体で多果のが鈴生りになった姿を目撃したことは一度もないのです(図8-137-3参照)。

 
 この個体は高さが3m弱ぐらいなので、樹上に結実したドングリの様子が隈無く観察出来ました。その結果、樹上で多果の結実状況に極端な分布があるのが判りました。南側の枝を見ると、全体の8割以上を多果が占めていましたが、北側の枝を見ると、9割以上を単果が占めていました。即ち、南側の枝にだけ多果が集中していたのです。
 
 さらに、今年の春に開花した幼果の形態についても観察したところ、樹木全体で多果の幼果は僅か2個しか見つかりませんでした
(**)。これは、来年の秋には多果がせいぜい2個しか結実しないことを意味します。

 毎年継続してこの個体を観察し続けてきたわけではないので、はっきりとした事は言えませんが、現状から判断すると、今回目撃した異常な多果の発現は今年限定の突発的なものとしか思えません。
** スダジイは2年成なので、来年の秋に実るドングリは今年の春に開花した幼果として樹上に併存しています。

 これまで、大量に多果を発現するのは特定の個体に見られる固有の現象だと考えてきました。しかしながら、もしもこの個体で多果の大量発現が一度きりの偶発的なものだとすれば、もはや固有の現象とは言えなくなります。そういう意味でこの個体は、私にとって大変興味深い調査対象になりました。これからも引き続き、この個体をモニターしていきたいと思います。