雑記125. 2013. 6.30
“ 性別コントロールは自由自在?? ”
 シラカシのような多果多産系の樹種を除くと、ブナ科の植物における両性花(両性形態の花)の発現率は非常に低い(*)ように思われますが、それはあくまでコナラ属の場合であって、マテバシイ属やシイ属では多くの個体で普通に見ることが出来ます。そこで今回は、マテバシイ属とシイ属の代表として、マテバシイとスダジイにおける両性花の実態について、およそ300個体を対象に調査した結果を紹介します。
  * 雑記120、121、123を参照願います。

 一般にマテバシイやスダジイの雌花軸は、軸全体が雌花のものと、先端付近だけ雄花が占有するもの(図8-125-1参照)の2つの形態が知られています。ところが、実際には雄花や雌花に混じってたくさんの両性花が存在します。

 調査の結果、マテバシイとスダジイのいずれにおいても、両性花は雌花軸の先端付近にある雄花とその下の雌花の境界付近に多く見られました(図8-125-2参照)。両性花の形態は、雄花ライクなもの [ 雄花の中央に萎縮した雌蕊があるもの ] が中心で、雌花ライクなもの [ 雌花の周囲に小さな雄蕊が付随したもの ] はごく僅かしか見られませんでした(図8-125-3参照)。
 但し、両性花の発現率についてはマテバシイとスダジイで大きな差があり、スダジイでは調査対象個体の60%以上で確認できたのに、マテバシイでは15%ぐらいでしか確認できませんでした。

 雌花軸における花序形態については、上記以外に先端付近にある雄花を除くと他は全て両性花のもの(図8-125-4参照)や、両性花や雌花の中に雄花がランダムに点在するもの等、花序のバリエーションは多様で、雌花軸の中で雌雄の花序を選択する自由度が極めて高いように感じられました。