雑記123. 2013. 6.13
“ 雄蕊も機能しているのでは...? ”
 4月から両性花(両性形態の花)について調査してきた結果、先月末までにアラカシ(4体)とシラカシ(4体)の計8体で多数の開花が認められました(*)。さらに、先月末〜今月頭にかけて開花したシラカシの中から、新たに17体で開花を確認しました(図8-123-1に一例を示す)。

 両性花を咲かせた個体は、いずれもたくさんの多果の雌花を咲かせていることから、前報(*)で指摘した通り、多果の雌花と両性花の間に何らかの関係があることは間違い無さそうです。だとすると、シラカシのような多果多産系の樹種(**)では、両性花は比較的ありふれた存在と言えるのかもしれません。
  * 雑記121を参照願います。
** ツクバネガシ、アカガシ等が多果多産系の樹種に該当します。


 一般に、コナラ属のような雌雄異花の植物に発現する両性花は、雌蕊か雄蕊の何れか一方が機能していないと考えられています。これまで私が調べたところ、図8-123-1のようなシラカシの両性花(雌花ライクなもの)については、普通の雌花と同じように雌蕊が機能していました(***)。しかしながら、雌蕊の周囲にある雄蕊については、葯が花粉を放出しないまま枯死するか、あるいは雌蕊の先端の柱頭が黒く変色硬化(花粉の授受がされない状態)してから花粉を放出している姿しか目にしたことがありませんでした。これでは、たとえ雄蕊が機能していたとしても自家受粉(****)すらままならない状況です。

 ところが、今年に入ってより多くの個体で調査してきた結果、数は少ないですが、両性花が開花してから雌蕊の柱頭が変色する前に雄蕊の葯が花粉を放出しているケースも見つかりました(図8-123-3、4参照)。
  *** 雑記106を参照願います。
**** ブナ科の植物は他家受精が普通ですが、自家受精でも種子をつくります。ただ、自家受精の場合はシイナ(不稔)がほとんどで、種子を形成するのは全体の10%前後と言われています。

 今まで私が目撃してきた コナラ属の両性花は、雄蕊が機能しない擬似両性花だと思っていましたが、これらを見ていると中には真の両性花が存在するのではないかと思えてきました。但し、外観だけでは両性花の雄蕊がもつ花粉が活性であるかどうか判断できませんので、本件についてはあらためて調査してみます。