雑記120. 2013. 5.29
“ 珍しいものだったんですね ”
先日、掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のアラカシの雌花軸で、たくさんの両性花(*)が咲いているのを見つけました(図8-120-1、図8-120-2参照)。
昨年の春に深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] のシラカシで初めて目にしてから、現在までに合計5つの個体(シラカシ、アラカシ、ナラガシワ、ウバメガシの4種)で両性花を確認しました(**)。短期間の内に様々な樹種でこれだけ多くの両性花を見つけることができたので、ブナ科 [ コナラ属 ] では比較的ありふれたものだとばかり思っていました。
ところが、今年に入って本格的に調査を開始したところ、現在までに2000体余りの個体をチェックしてきましたが、両性花を咲かせた個体はアラカシとシラカシを合わせて僅か8体しか見つかっていません。これまでは単に運が良かっただけで、実際のところ両性花は非常に稀にしか見られないものであることを思い知らされました。
* このホームページでは、1つの花に雌蕊と雄蕊の両方が存在するものを両性花(両性形態の花)と称します。
今回、掖谷公園で両性花を確認したアラカシは、新たに見つかったものではなく、雑記080で紹介したのと同じ個体です。2年連続で大量の両性花を咲かせたことから、個体によって開花するものとそうでないものがあると思われます。
** これまでに見つけた両性花については、雑記078、080、102、107を参照願います。
さらに、この個体の雌花軸をよく見ると、雌花や両性花に混じってかなりの数の雄花が見られました(図8-120-3参照)。
マテバシイ属やシイ属では、雌花軸の先端付近に雄花や両性花が咲いたものや、雄花軸の根元付近に雌花や両性花があるものがごく普通に見られます。参考までに、シリブカガシの雌花軸の例を図8-120-4に示します。
しかしながら、コナラ属の雌花軸に雄花が存在するケースは、ここで紹介した例を除いてほとんど目にしたことがありません。コナラ属の雌花軸に雄花が咲くのは、両性花を開花しやすい個体に特有の現象かもしれません。