雑記119. 2013. 5.23
“ 単果にも存在しました ”
 ドングリを結実するブナ科の雌花(雌蕊)は、通常2〜5枚の複数の心皮から成る複合雌蕊ですが、昨年シラカシの幼果(開花後1.5〜2ヶ月が経過したもの)を詳しく調べたところ、多果を構成する複数の雌花の中に単一雌蕊の雌花が発現しやすいことが判りました(*)
* セクション14、もしくは雑記081〜雑記085を参照願います。
 ドングリの成り立ちを深堀りするには、花の段階からじっくりと観察するのが重要ですから、今年も4月以降に開花したアラカシやコナラを中心に、手に取って確認出来る範囲の花や幼果の形態を調べてきました。今回、その過程で幸運にも1本の花柱をもつアラカシの単果(幼果)(**)を見つけました。(図8-119-1参照)。
** このHPでは、1つの殻斗が複数の堅果を包含した多果に対して、1個の堅果を包含した標準形態のものを単果と称します。

 この幼果を見つけたのは、兵庫県神戸市の蒲池公園にあるアラカシです。これを採集したのと同じ個体の他の幼果(図8-119-2参照)の花柱と比較すると、この花柱の太さが他の幼果の花柱の1本分に相当すること、そして先端の黒く変色した部分が球形状である(普通は平板状)ことから、この幼果は単一雌蕊に由来するものと考えて間違いありません。

 今回の調査で、多果という特異な形態でしか発現しないと思われた単一雌蕊が、単果でも発現することが判りました。それにしても、数百体ものアラカシの単果をチェックして見つかったのはこれ1個だけでしたから、いかに発現しにくいものかお判りいただけるでしょう。