雑記112. 2012.11.25
“ ミニマムクラスのドングリ ”
 “ 紅葉まつり ” が開催されている万博公園 [ 所在地 : 大阪府吹田市 ] に行ってきました。万博公園の紅葉は意外に知られていませんが、その美しさは名所と呼ばれるところに決して引けをとりません。都会から少し離れた兵庫県三田市にある自宅の周辺でも、毎年この時期になると周囲の山々が赤や黄色に色鮮やかに染まりますが、日常的に美しい紅葉を目にしている私ですら、万博公園の紅葉は印象に残る素晴らしい景観ですので、みなさんも機会があればぜひ一度ご覧になっ下さい。

 万博公園と言えば、クヌギ、コナラ、マテバシイのドングリの形態が多様ですが、もう一つ小さいながらも京阪神では随一の多様性を誇るものがあります。ちょうど今時分、落下の最盛期を迎えるツブラジイがそれです。
 ツブラジイなんてスダジイを小さくしただけで、形はみんないっしょだと思っている方が結構多いんじゃないでしょうか。実は、小さくてもドングリの形態は驚くほどバラエティに富んでるのです☆

 図8-112-1は、紅葉まつりに行った時に複数の個体から採集したドングリです。これらは、各個体の平均的な形状と考えて頂いて結構です。大きさだけでなく、丸いものや細長いもの、そして毛深いものや無毛のもの、さらには光沢のあるものや無いもの等、個体によって形態が大きく異なるのが一目瞭然ですよね♪

 ツブラジイのドングリと言えば、より小さいものに目がいってしまうのですが、これまでに最も小さいのに出会ったのは、自宅からバイクで20分ぐらいの所にある有間神社でした(図8-112-2参照)。
 この神社には、たくさんのツブラジイが植栽されていますが、神社内で侵入出来るエリアは限られていますので、実際にドングリを採集出来る樹は十数体です。それらの中に、私がこれまで見たもので最も小さいドングリを落とす個体がありました。

 今年も有間神社を訪問して、ツブラジイのドングリをたくさん採集しましたが、その中でドングリの形状に特徴のある個体から採集したものを大きいのから順に一列に並べてみました(図8-112-3参照)。平均的なツブラジイのドングリは、大体左端から4〜5番目ぐらいになりますので、最も小さい右端のドングリは幅がその半分ぐらいしかないことがお判り頂けるでしょう。

 この図だけでは、右端にあるドングリがどれぐらい小さいのか実感が湧いてきませんので、身近なものと大きさを比べてみました。図8-112-4は炊きたてのコシヒカリ米といっしょに並べたところです。さすがに、そのままの米粒では小さ過ぎて比較の対象にはならなかったのですが、炊飯したものと比べるとほぼ同じぐらいのサイズになりました。
 一方、図8-112-5は1円玉の上に互いに重ならないようにしてこのドングリを載せてみたところです。1円玉から僅かにはみ出しているものもありますが、全部で7個も載せることが出来ました。

 ドングリを小さくするメリットは、虫害を回避することにあると考えています(*)が、そもそもツブラジイのドングリは標準的なサイズでも他の種類に比べてかなり小さいので、虫害を受ける可能性は極端に低いはずです。
 それなのに、なぜこの個体は乾燥に対して極端に脆弱になる(堅果が発根しにくくなる)という代償を払ってまで、こんなにもドングリを小さくする必要があるのでしょうか?不思議としか言いようがありません。
* 詳細は、セクション16-4を参照願います。