雑記011. 2009.11.28
“ アラカシとシラカシのドングリの識別方法 ”
 ホームページを開設してから、アラカシとシラカシのドングリの違いについての問い合わせが何軒かありました。そこで今回は両者の識別方法について解説します。

 まずは、図8-11-1を御覧下さい。これらは、先日採集してきたばかりの新鮮なアラカシとシラカシの堅果です。どれも表面に艶があって、とってもきれいでしょ♪ さあ、皆さんはどれがアラカシで、どれがシラカシのドングリだか判りますか?ドングリを見慣れていない方にはちょっと難しいかもしれませんが、正解は図8-10-4の下段にありますので、各自で答をチェックしてみて下さい。


 ドングリの中には形が非常によく似ていて、堅果を見ただけでは種類の同定が難しいものもあります。特にツクバネガシとアカガシについては、特殊な形態を除いて両者を識別するのはまず無理でしょう。
 
 他にも、アベマキとクヌギや、アラカシとシラカシも堅果の形態がよく似ていますが、後者については堅果のある部分に着目すれば、誰でも容易に識別出来るようになります。着眼点は首回りの構造の違いです。
 それでは、まずアラカシの首回りの特徴から見てみましょう。図8-11-2に、アラカシの花柱とその周辺構造の形態例を示します。いずれも、花柱の周辺の果皮に薄い輪状の文様があります。アラカシの堅果は、(a)や(b)のように首から肩にかけてなだらかなカーブを描くものがほとんどですが、中には(c)や(d)のように輪状の文様の部分が肩から突出して、首の部分がまるで堅果から独立した構造物のように見えるものもあります。以下、便宜上この突出部分を多重輪状突起物と称することにします。

 次に、シラカシの首回りの特徴について見てみましょう。図8-11-3に、シラカシの花柱とその周辺構造の形態例を示します。一般に、シラカシの堅果の首から肩の辺りには、白くて細かい毛が生えています。この毛はアラカシには見られない(*)ので、毛の有無が両者を識別する一つの要素になります。但し、全てのシラカシに目で見てはっきりとわかるぐらいの毛があるという訳ではありませんので、これだけでは両者の識別方法としては不十分です。
* 肉眼では確認しづらいですが、ミクロに見るとアラカシの首の辺りにも僅かに毛があります。
 他の識別のポイントとして、多重輪状突起物の形態が挙げられます。アラカシでは特定の個体にしか見られませんが、シラカシではこの突起物が全ての個体に共通して存在します。この突起物は両者に見られる特徴なので、明確な識別要素には成り得ないと思われますが、アラカシとシラカシでは見た目に決定的な違いがあります。
 その違いとは、アラカシの突起物には果皮と同じような光沢が有るのに対して、シラカシにはそれが無いということです。シラカシはこの部分に微細な毛が生えていたり、リングの間隔が非常に狭く密であることから、くすんだ様に見えます。

 以上の点に着目すれば、アラカシとシラカシの堅果の識別は可能です。最後に、識別方法をフローチャートにしてまとめておきます(図8-11-4参照)。