雑記104. 2012.10.22
“ 仙台にて 〜 ひとときのドングリ採集 〜 ”
 先週末の19日、私の恩師である東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の畠山教授の定年退官パーティに出席するため、宮城県仙台市に行ってきました。久しぶりにお会いした先生は、とても定年を迎えられたとは思えないぐらい若々しく、意気軒昂としていらっしゃいました。

 会場で研究室時代の方々と話をしていると、早朝から深夜、そして時には明け方近くまで、連日眠い目を擦りながら実験設備と格闘していた頃の事がとても懐かしく思い出されました。在学中は、畠山先生に連日つきっきりでご指導を賜り、その時に学んだ多くの知見が現在の私の仕事にも多分に活かされています。この場をかりて、あらためて先生に御礼申し上げます。これからも御健勝で御活躍の事、心からお祈り致します。

 さて、この時期に遠路はるばる東北地方まで来たのですから、私としてはドングリ探索をしないではおれません。仙台市内には、大学時代に知り合った嫁さんの実家がありますので、退官パーティの晩はそこに泊めて頂き、翌日は実家から徒歩で10分ぐらいの所にある台原森林公園 [ 所在地 : 宮城県仙台市泉区、敷地面積〜60ha ] に出掛けました。

 
 台原森林公園は市内でも有数の大規模な公園で、森林浴が楽しめる山道、庭園や遊具施設のある広場等があります。ここを訪れるのは今回が初めてなので、園内の土地勘は全くありませんでした。おまけに、明石公園 [ 所在地 : 兵庫県明石市 ] の公園協会が発行している “ どんぐりマップ ” の様な気の利いたものは、ここのネットガイドにはありませんでしたので、出来る限りドングリの樹の植栽分布を把握するために、この日は終日園内全域を徒歩で散策して廻りました。
 隈なく散策した結果、ここにはコナラ、クヌギ、シラカシ、マテバシイ、クリ等の5種類のドングリの樹があることが判りました。大半はコナラで、クヌギ、マテバシイ、シラカシ、クリは僅かに散見される程度でした。京阪神の公園や緑地でごく普通に目にするアラカシやウバメガシは、ここでは一切目にすることはありませんでした(生垣等は除く)。

 一昨年、北海道を旅行した時には、行く先々でミズナラがたくさん見られたので、同じ寒冷地である宮城県にもたくさん植栽されていると期待してきたのですが、残念ながら園内では1本もありませんでした(*)
 * 台原森林公園に隣接する仙台市科学館の入り口付近に、ミズナラが2本植栽されていました。樹下にはたくさんのドングリが落ちていましたが、既に果皮が腐敗しており、ほとんどが発根していました。恐らく、9月にはドングリの落下が終了したと思われます。

 コナラに関しては、相当な量のドングリが落下していました。多くの個体から採集したものを図8-104-2に紹介します。一方、シラカシはほんの僅かしか植栽されていませんでしたが、その中の1本に多果がたくさん結実しているのを見つけました(図8-104-3参照)。京阪神から遠く離れた東北の地でも、やはりシラカシは多果を発現しやすいみたいです。

 ここのコナラはほとんどが高木なので、樹上にあるドングリや虫瘤を手に取って観察することは出来ませんでしたが、ある個体で目線の高さまで垂下した枝を見ると、殻斗の側面に大きな冬芽の様な形をした虫瘤があるのに気づきました(図8-104-4参照)。
 これらの虫瘤はこれ以外にも複数の個体で相当な数を目撃しました。京阪神では見たことが無かったので、寒冷地に特有のものと考え、ネットにあるHP “ 北海道の虫えい(虫こぶ)図鑑 ” (**)でその素性を調べてみたところ、類似の形をしたものにナラミウロコタマフシ [ 種名未同定 ] がありました。ナラミウロコタマフシは、コナラやミズナラの殻斗にナラミウロコタマバチが形成した球形の虫瘤で、7月中旬頃に出現して翌年には成虫が羽化するそうです。

 ただ、前記のHPに掲載された虫瘤の写真と比べてみると、小さな鱗片状のもので虫瘤の表面が覆われているところは良く似ているのですが、虫瘤の色や形状が少し違う(球形と言うよりは、むしろ筆先の様な形)ことから、これがナラミウロコタマフシなのかどうか私には判断出来ません。

 今回、たくさんの虫瘤を採集してきましたので、詳しく調査してから後日あらためてご報告致します。

** 虫瘤の写真を御覧になりたい方は、北海道の虫えい(虫こぶ)図鑑 [ http://www.galls.coo.net/index2.html ] を参照願います。ブナ科の植物に形成された虫瘤について詳しく記載されてます。なお、このHPは相互リンク不可ですので、御覧になられる場合は、前記のアドレスに直接アクセスして下さい。