雑記102. 2012.10.16
“ 一年成のはずなのに... ”
先日、大阪府堺市の実家に行った帰りに、大阪府立大学の中百舌鳥キャンパス [ 所在地 : 大阪府堺市 ] に立ち寄りました。ここはこのHPでも度々紹介してきましたが、府下では有数のドングリの名所です。
ところが、ここ数年急速にキャンパス内の整備と新たな研究棟の増設工事が進行し、これまでドングリの樹が植栽されていた場所が徐々に失われつつあるのです。ここを京阪神地区の “ ドングリの名所10選 ” (*)として取り上げてきた私にとって、これは由々しき事態です。
府下にある広大な公園や緑地に比べれば、ここにある樹木など取るに足らない微々たるものかもしれませんが、構内にはたくさんの種類のドングリの樹があり、中でもナラガシワのドングリの形態の多様性は他ではなかなか見られないぐらい素晴らしいものがあります。そんな訳で、大学関係者の方々にはこれからも構内の樹木を大切に保護して下さることを切に願っております。
* セクション7 “ どんぐりマップ ” に、私が選んだ京阪神のドングリの名所10選があります。
ナラガシワのドングリが熟するにはまだ少し早いのですが、ある個体で奇妙な光景に出くわしました。それは、ここ1ヶ月内で開花した痕跡が認められたのです(図8-102-2、-3参照)。
黄緑色の長い果軸(穂状花序)には、開花したばかりのたくさんの小さな幼果が見られました。この状況から推察すると、9月の中旬〜下旬にかけてたくさんの花が咲いたと思われます。
このナラガシワから採取した果軸を拡大すると、雌花が受粉した幼果 [ 図8-102-3 (a) 参照 ] 以外に、たくさんの両性花(**)が受粉したものが混在していました [ 図8-102-3 (b)、(c)参照 ] 。特に、果軸の先端付近には両性花の幼果がたくさん密集していました [ 図8-102-4 (d)、(e)参照 ] 。
** 両性花の例については、雑記78、雑記80を参照願います。
最近、春と秋の2度開花するマテバシイを確認(***)したばかりなので、この時期に開花するナラガシワがあってもなんら不思議ではないのかもしれません。ただ、マテバシイは二年成なので、半年遅れの秋に開花した雌花でも翌年の秋には結実する可能性が十分ありますが、ナラガシワは一年成なので、果たして秋に開花した雌花が実を結ぶことがあるのかどうか大変興味があります。
秋に開花したマテバシイと同様に、このナラガシワについても今後の動向について詳しく調査していきたいと思います。
*** 秋に開花したマテバシイの概要については、雑記92、雑記94を参照願います。